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コースを知る。 

by Masa Nishijima

ホームコースへの理解と見識を深めよう。

各ホールの設計をクラシック理論に基づいて解説していきます。

記念すべき第1回は13番ホールです。


No.13 CLASSIC CAPE
Short Par 4 358/306/262/229 Yrds

造成中、設計チームのアイデアにニクラウスが悩み抜いて幾度も設計変更を繰り返したホール。その結果、池を絡めたトリッキーにも思える狭いフェアウェイのこのホールはクラシック設計の哲学を持ったホールになりました。ティショットの攻略ルートと、グリーン周りのハザードセッティングは、クラシック設計論のドライバブル(1オン可能)なクラシックケープホール(Classic Cape Hole)の理論を持ち、アプローチから見るグリーンの形状は、フェアウェイセンターからは斜め45度角に配置され、グリーン後部がフォールアウェイのスロープを持つ近代的レダン(Redan)の要素も兼ね備えています。

多分、18ホールの中で最もユニークなグリーンの形状でしょう。

もしトーナメントでフロントティを使うならば、当然リスクと報酬を兼ねたドライバブルパー4のホールに変貌します。しかし仮にティショットがグリーンを捉えても、スピン量が足りなければ、打球はレダングリーンの形状によって、後方のラフ、又はバンカーへと転がり落ちていくでしょう。ホール全体のスケールは小さいかも知れませんが、ニクラウスが日本で描いたベストホールの一つと言えるでしょう。

それではここで米国ゴルフ界の父C.B.マクドナルドの著「Scotland Gift」からCapeとRedanの戦略性について解説致しましょう。


クラシックケープの戦略的法則

ティからフェアウェイを斜め対角線(ダイアゴナル=Diagonal)に捉えるホールレイアウトから、砲台状にやや高くされたグリーン周りの三方をハザードで囲むのが、クラシックなケープホールの基本的設計理論です。この発案者であるC.Bマクドナルドはニューヨークの名門ナショナルゴルフリンクスオブアメリカ(National Golf Links of America=以下、略NGLA)の14番ホールで、開設当時1オン可能なドライバブルパー4に設計しました。しかしこれは2番のサハラホールがドライバブルホールとしてティショットの攻略理論が同じだった事から、ティを移動し、1オンを不可能にした2ショットホールに変更しました。ゴルフ史家達は1オン可能だったものをClassic Cape, 2ショットホールに変更されてからのものをCapeと呼んでいます。





戦後、モダンコース時代に移ってもC.B.マクドナルドの理論を自らの設計に取り入れたのが鬼才と言われたピート・ダイ(Pete Dye)です。

彼はマクドナルドのクラシック設計のテンプレートホール理論を飛距離が伸び続ける現代のPGAツアーの舞台に挑戦させたコース設計家でした。多くのトッププロたちが鬼才と恐れるピート・ダイの作品も、実はマクドナルドの理論がルーツにあるのです。リスクと報酬の戦略性を持つダイのケープホールの代表的なものには、TPCソウグラス・スタジアムコースの最終18番、そしてライダーカップ、全米プロも開催されたキアワオーシャンコースで最もタフと言われた13番ホールがあります。ダイのケープホールの理論で最も注意を払うべきことは、いかなるピンポジションにおいても手前からパーセーブを確実なものにすることで、欲を出し過ぎてピンデッドに行けば、ティショットだけでなく、アプローチにもダブルにペナルが生まれる危険がある事です。


レダン(Redan) とは

米国クラシックコース時代の設計の定義には8つのTemplate holeがあります。

その中の一つ、レダン(Redan 敵を欺く要塞建築の一つ)の名称を持つPAR3ホールは現在においても最もインスパイアされているクラシック設計のホールです。それはスコットランドのノースバーウィックGC(North Berwick GC)15番PAR3ホールが元祖とされています。

グリーンはティから見て斜め45度角に配置され、その手前にバンカーがグリーンの配置角度と同じく並行して

置かれています。グリーンセンターから後方部にかけて緩やかな傾斜が流れ、ピンがグリーン左サイドにきられた時に、ピンデッドに攻めれば打球はグリーンからこぼれ落ちるか、又は距離が足りなければ斜めに配置されているバンカーに捕まる設計になっています。つまりどこにピンが切ってあろうと右サイドのフロントラインを攻略ルートに選択し、2パット又は2ショット+1パットのパーセーブの攻めが、オールドマンパーの賢者が選ぶ道であると唱えるホールです。しかしこのホールのティの配置が右にずれてグリーンを縦長に捉えた場合、なんでもない単調なフォールアウェイグリーン(後方にスロープが落ちていく)のパー3にな

ってしまいます。つまり要塞の壁に例えるならば、ただストレートに高い壁を作っても何の防御にもならず、相手の攻撃をかわすには45度角の両サイドの壁も防御に必要となる理論です。

レダンは要塞が起源となって発案されたホールです。レダンの戦略性を活かすための条件として本家のノースバーウィック(North Berwick)のヤーデージを基本とし、バックティから195ヤードのPAR3が一様の目安となっています。

又、クラシック時代の英国人コース設計家の巨匠ハリー・S・コルト(Harry・S・Colt)は、グリーンとバンカーの配置を正反対に向けたリバースレダン(Reverse Redan)も発案し、フェード系ヒッター(当時のゴルフではスライサーという言葉が適している)に対抗したりしました。


さて下の写真は敵を迎え撃つボンネット型のトーチカです。この二つのトーチカの間には45度角に切られた掩体壕の堀と壁が作られて、一つの要塞を成しています。掩体壕の堀は英語ではバンカーであることからこのトーチカをボンネットバンカー(Bonnet Bunker), 又は英国軍ではそれを囲む防御帯をボンネットレダン(Bonnet Redan)と呼びました。

つまりグリーンの形状が必ずしも45度角のフォールアウェイグリーンだけではなく、円形状のボンネット型のグリーンも周りがバンカーの堀で囲まれていれば、アナザーレダンと呼ぶことができるのです。

全米オープンも開催されたボストンのザ・カントリークラブ・ブルックライン(The Country Club Brookline)にはそのボンネット型レダンのPAR3が存在しています。


以上、第一回目は13番ホールのCapeとRedanの戦略的法則について解説致しました。






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