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コースを知る

ホームコースへの理解と見識を深めよう。

16番ホール ダブルプラトーグリーン

 東京クラシッククラブの18ホールの中で、グリーン周り(Green Complexes)の景観性及び樹木とのビューバランスが最も整ったホールが16番でしょう。フェアウェイセンターのIP(ティショットのランディングエリア)からグリーン全体を見ると手前グリーンサイドバンカー(*ガードバンカーの用語は誤りです。)

の形状に上手くマッチさせるかのようにグリーンセンターの高さを下げ、グリーンの左右を砲台状に高くしているフタゴブラクダの背のようなダブルプラトーグリーン(Double Plateau Green)であることがわかるでしょう。


2000年以降のニクラウス設計チームのグリーンの特徴はこのダブルプラトーの形状を多く用いるようで、東京クラシックでは16番グリーンがそのタイプにあたります。ニクラウスが若かりし頃、USGAからの依頼で、ニューヨークのアップルツリーギャングの逸話でもお馴染みの1888年設立のSt.Andrews GCのリノベーションを1983年から2年かけて行いました。95年と08年に再度、リノベーションを行い、その時に設計チームが用いたのがこのダブルプラトーの形状をインスパイアしたグリーンでした。2番、8番のロードホール(Road Hole)にその特徴が表れています。

このダブルプラトーグリーン、その元祖はNorth Berwick GCの #16番 ゲートホール(Gate Hole)のグリーンで、そのフタコブラクダの背中のようなグリーンは砂丘の凹凸うねりを活用し造られたもので、 けして人間が盛り土して造成したものではなく、重機のなかったリンクス時代のコースは、盛り土よりも 砂丘を削ってグリーンの形状を整えていきました。


19世紀後半、シカゴからセントアンドリュース大に留学したC.B.マクドナルド(後のUSGA初代会長)はそこでリンクスランドの多くの著名人に巡り合い、帰国後、本場リンクスの自然のテイストを活かして造られた名ホールの攻略法の愉しみをスコットランドギフトとして後世に伝え残しました。

それらのホールは8つのテンプレートホール(Template Hole)の定義を主軸に、そのそれぞれが特徴をさらに拡張し、それらが枝葉となって32のコース設計理論に結びつけるものでした。




それではダブルプラトーグリーンを解説しましょう。

ダブルプラトーグリーンとは?

(Double Plateau Green. Classic Template Holes by C.B.Macdonald)


英国リンクスで砂丘の高い位置、またはプレーゾーンから同じレベルで、アップヒルなルート上に置かれたグリーンの中に、表面の中心部から左右又は前 後に大きく二つに分かれるような砲台状のグリーンを、米国ではダブルプラトーグリーン(Double Plateau Green)と呼び、クラシック設計のテンプレートホール( Template Hole) の一つになっていま す。C.B.Macdonald が名称したもので、彼は自身の作品である National Golf Links of America(NGLA)の 11 番、Chicago GC の6番、Fishers Island の 18 番等にこの Double Plateau を設計しています。マクドナルドはよく距離のあるロングパー 4、又は2打目地点からドックレッグになるホールにこれを活用しました。

当時マクドナルドは全英オープンの開催コースでもある Royal St.George’s GC の8番ホールに強い関心を持ちました。右にややドックレッグし、ティショットをセンターやや左手に打つと ダブルプラトーグリーンは瓢箪型の縦長グリーンに捕えられますが、右サイドに打った場合、グリーンをやや横から捉える為、縦長は活用できず、中央に歪がある事から、攻略として二つの小さなグリーンを想定しなくてはなりませんでした。2003年の全英オープンではタフなホールの一つとして、二人に一人がボギー以上の難関ホールとなりました。 マクドナルドは左右に砲台グリーンを設定した場合、その前後のどちらかに小さなマウンドを設けたりもしました。

これはアプローチの距離によってその攻略ルートをマウンド の前後にするか定め、短いものはグリーンフロント、長いものは後方部にそれがセッティングできるように形状したのです。彼はグリーンが砲台状に盛り上がる周辺(フリンジ=カラーを含む) から全体を約1200平米位の大きさが最もこのダブルプラトーを楽しめると 判断しました。二つの砲台部分の上と、中央の低い箇所にもそれぞれピンが切れなくてはならないからです。また中央にピンを切らない、まったく二つの砲台を繋げるだけの意味しかないグリーンでは、フロントの勾配を強め、手前に深いバンカーを配置したりしました。砲台部分に行かずにセンター手前に落ちたボール は、その勾配でバンカーに流れ落ちる、リンクスに多く見られるまさにグリーン上でのペナルでした。


80年代、日米のコース評論では、1000平米を超えるような大きさのグリーンはショットバリューを無くすとよく論じられましたが、たしかに表面がフラットでただ大きいだけのグリーンでは問題があるでしょう。しかしグリーンの形状によっては必ずしもそうではない事がリンクスから得たこのダブルプラトーの設計アイデアから理解できるはずです。平均430平米にも満たないペブルビーチの小さなグリーンを理想とするジャック・ニクラウスが90年以降のモダンコース時代に活用したのが小さな二つのグリーンを繋げるかのようなダブルプラトーの設計理論でした。



Royal North Devon GC ( クラブ名 Westward Ho !)

Westward Ho!(西へ向かえ!)は、チャールズ・キングスレイの海洋冒険小説のタイトルで、その舞台となった村が、村興しとして村名にしました。

その海岸線にあるリンクスがロイヤルノースデボンGC(Royal North Devon GC)で、その地名にならってWestward Ho!と呼ばれています。ちなみに、「!」のような感嘆符がついた町村は、イングランドではここだけでしょう。


米国ボストン郊外、プリマスはイギリスから清教徒たちを乗せたメイフラワー号が着岸したところで知られていますが、この近郊の丘陵地帯に1922年設立されたゴルフクラブが、英国のロイヤルノースデボンGC(Royal North Devon)に敬意を表し、Eastward Ho!(東に向かえ!)をクラブ名にしています。

歴史を重んじるゴルファーズジェントルメンたちの友情の証でしょうか。



Text by Masa Nishijima

Photo by Masa Nishijima(North Berwick)



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